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zoom RSS 一六銀行

<<   作成日時 : 2009/02/19 11:18   >>

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「さぁ〜行くか?」

昨夜、小林君から「付き合え」と言われ
彼の思惑を図り知る事の出来ないまま翌日を迎え
今、オレは彼の後ろを付いて歩いていた。

「どこに行くの?」
「はぁ?まだそんな事を言ってるのか?」
「だってぇ〜」
「銀行だよ。ぎ・ん・こ・う」

昨夜から話に上がっているこの“銀行”と言うキーワード。
いくら頭の弱い小学生と言えども銀行の業務内容程度は把握出来る。
その業務内容から考えても“ギターを買う=銀行”と言う図式は浮かばない。
そりゃ、預金でもあれば話は変わって来るのだが…

歩き続ける事、数分。

「着いたぞ」の言葉。
その言葉の先に見える看板には“銀行”と言う文字では無く
“質”と言う文字がデカデカと書かれていた。

「ここが銀行だ」と無駄に胸を張る小林君。
「ここが???」と意味が分からず立ち尽くすオレ。
二人は“質”と書かれた暖簾をくぐって中へと入った。

「コバちゃんっ、今日は何を持って来たんだい?」

イカにもと言った風体のオバちゃんが小林君の事を“コバちゃん”と言っている。
どうやら、小林君はこの店では“良い顔”なのだろう。

「今日は客を連れて来たぞ」
「客ってソッチの坊やかい?」
「そ」
「子供をこんな所に連れて来ちゃダメだよ」
「良いんだよ、こいつの欲しいモノはココでしか買えないんだから」
「坊や、何が欲しいんだい?」

店のオバちゃんは小林君とやり取りをしながらオレに言葉を掛けて来た。
オレは何が何だか分からないまま「ギターが…」とだけ告げた。
すると、オバちゃんは「ギターなら奥にあるから見ておいで」と言ってくれた。
小林君はと言うと店にいる若い女性と話し込んでいる。
オレはオバちゃんに言われた奥へと歩を進めた。

その先にはギターが何本も無造作に置かれている。
今であればギタースタンドなんかに乗せてディスプレイするだろうが
当時のギターの扱いなんざ、そんなモノだ。
それでもオレは目には宝の山の様に映っていた。
オレは一番の宝を探し当てるが如く、丹念に調べて行った。
そして、遂に探し当てる事が出来た。

“ヤマハのフォークギター”だ。

実はヤマハのギターは学校に置かれているモノと同じ。
当時は分からず使っていたのだが、
実はヤマハのフォークギターってネックが少しだけ細く仕上げている。
この少しの違いがガキの手には嬉しいサイズ。
勿論、ここで売られているモノは学校のソレとは別物なのだが
ネックの細い所は変わらなかった。
オレはこのギターにしようと決めた。

「あの〜これで…」とギターをオバちゃんに差し出した。
オバちゃんは値踏みをするかの様にギターを見ながらこう言った。
「坊や、いくら持って来たんだい?」と…

前回も書いたが今回の予算は3万円。
勿論、全額使っても良いのだが、ここで全額使ってしまえば先々が辛くなる。
オレは少しだけ誤魔化して申告した。

「2万円です」と…

この金額に少しばかり顔色を曇らせたオバちゃん。
その顔色の変化に気が付いたオレ。

『ど〜しよう?本当の事を言うか?』
『このまま押し切っちゃうか?』
『小林君、何とかしてくれないかな?』

様々な思いが瞬時に交錯する。
頼みにしようと思った小林君はいまだ女性と談笑中。
『小林君は使えない』と感じていた、
その時。
オバちゃんはユックリと口を開いた。
「1万5千円で良いよ」と…

オレはその言葉に耳を疑った。
ヤマハのフォークギターが1万5千円?
昨日、ショールームで見た時は絶対に手が出せないと思っていたのに
そのギターが今、オレの手元に入って来るとは
オレは「ありがとうございます」と頭を深々と下げた。

「でもね…」頭を下げるオレにオバちゃんは言葉を続けた。
「このギターは壊れているんだよ」
「へっ?」
「弦を巻く所が壊れてしまっていて弦が上手く巻けなくて戻ってしまうんだよ」

言われてみれば、ペグを取り付けているネジの所がバカになっていて
ペグそのモノがユルユルになっていて
弦を巻くとその緩んだペグに負荷が掛かりペグそのものがガタガタになると言う代物だった。
今、考えれば致命的欠陥だったのだが
その時は頭の中は“ヤマハのギター”一色。
オレは何とかなるだろうと高を括って欠陥承知でそのギターを買って帰って行った。

熱病は直ぐに治まった。
いくら“ヤマハのギター”と言っても壊れていたのでは仕方が無い。
一瞬の熱病に浮かれ冷静な判断が下せれなかったテメエ自身に後悔していた。
…とは言え、今更何を思えば良いのだろうか?
オレは壊れたギターを見詰めて途方に暮れていた。

そして…父が帰って来た。
父は買って来たばかりのギターを見詰めてこう言った。
「なんだ中古を買ったのか?」と
その言葉を引金にオレは眼から涙を流しながらこう言った。
「でも、壊れてるんだ」

父は何も言わずギターを手に取ってフムフムと言った具合で何かしら思案していた。
そしてオレに割り箸を持って来いとだけ告げた。
訳が分からないまま割り箸を持って行くと父はペグのネジを取り外して
バカになっていたネジ穴に割り箸を埋め込み再びペグを取り付けた。
すると、それまで弦を巻いても巻き切れなかったペグは本来の役割を果たし出した。

「お父さん…」
「こんな事でイチイチ泣くな」
父はオレの頭をポンと叩きながら笑っていた。
その後、色々と話をした。

小林君に銀行に行くと言って連れられて行った事。
壊れているのを承知で買って上で後悔している事。
自分自身がヤマハのギターが欲しかったのではなくギターが欲しかった事等など…
父は取り留めの無いガキの戯言を「そうか、そうか」と聞いてくれた。

「ほら、直ったぞ」
全てのペグが基本動作が出来る様になっていた。
オレは少し照れながら「ありがとう」と言ってギターをペンペンと弾き出した。

父は「小林の野郎、一六銀行なんざ連れてくんぢゃねぇや」と言っていた。

昔は“質屋”の事を
“一+六=七(質)”の語呂合わせから“一六銀行”と呼んでいたのだ。
これで銀行の謎も解明した。
結果オーライでヤマハのギターも入手出来た。
紆余曲折を経てオレのギターとの付き合いが今、始まった。

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